市民の健康のためのネット
ワークを行政とともにつくる


碧南市休日診療所は、碧南市保健センターの一画にある。

7万人強の人口を擁する碧南市。現代詩人でもある市長の永島卓氏は、市民あげての徹底的なゴミの分別回収や低所得層の介護保険料減免、市内各小学校に児童クラブを設置、携帯メールでの育児相談の開設、独特の施設づくりも実現してきたそうです。
こうして、市民本位の発想から構想されている「碧南市健康ネットワークプラン」にも、ORCAが果たす役割が出てきています

ベンダー紹介:

株式会社 オーテックス ・・・ サポート地域:愛知
〒444-0878 愛知県岡崎市竜美東 1-7-14
TEL: 0564-54-5741 /FAX: 0564-57-2030/URL http://www.autex.jp

1988年から独自に開発したレセコンを販売し、医事システムの運用を支えてきた実績を持ってORCAサポートを始めた。愛知県内には12ヵ所のサポート拠点があり、リモートメンテナンスのほか短時間でサポート先へ到着できる地元密着型体制を取っている。また、県内導入数bPの実績が地域対応と運用支援の充実度を示している。導入開始から約2ヵ月間で本稼働しており、受注から本稼働までのマニュアルが県内ではできつつある。移行・導入の流れが確立したら、隣県ベンダーと協力した普及を視野に入れる。また、周辺機器としての自社製品もORCAと連動している。

「市民のために」行政と取り組む構想の一端を担うORCA

「5年ほど前に、雑談の中で市長から『市民の健康のために何かできることはないか』という話があったことが、碧南市健康ネットワークプランの始まりです。まず、一患者一カルテの発想があり、さらには『生まれてから亡くなるまで、市民のみなさまの健康管理ができたら』と市民の健康のために、福祉や介護、災害時の救急医療などに市民と碧南市と碧南市三師会が一体となって取り組んでいこうということになりました」(碧南市医師会会長・奥田雪雄氏)。
 碧南市健康ネットワークプランは2003年度から13年度までの10年間を目標年次としている。昨年1年間で10の分科会に分け、それぞれの分科会で行政と三師会が検討を重ねた上で、市民と行政、三師会が一体となった策定委員会で承認され、市に答申し認められた。個人情報に対するセキュリティ保証についてはまだ課題が残るが、行政と三師会での話し合いを続け、できるところから段階を経て構築していく考えだ。最初に、臨床検査センター・産業保健センターや、救急・休日診療・防災対策、そして、介護・福祉という緊急に必要なネットワークを構築する。この地域では、東海地震や東南海地震に備える必要もあるのだ。そして、歯科医師会・薬剤師会にはまだホームページがないので、その準備から始めネットワーク化したいところである。さらに、医療連携の電子化や教育機関との接続を行う。時間をかけて実現したいのは、電子カルテのネットワークづくりだ。市内での電子カルテ稼働はまだない。しかし、漠然とした関心は高まっていて、電子カルテ研究会も組織されている。数年後の導入を考えるにしろ、個人で検討するよりも情報が豊富だ。
 この碧南市健康ネットワークには、医師個人が任意で加入するのではなく、医師会全体で加入することが大前提になっている。検査センターだけではなく、医師会とも接続し、医療機関同士がつながっていく。さらには、行政も巻き込んだネットワークだからこそ、公民館にも接続端末が設置される。碧南市の動向情報が市民の健康づくりに役立っていくのだ。そのためにも、市民に対するIT講習会も開かれている。
 もともと、碧南市と碧南市医師会は、1960年代後半から「市民の健康を守る会」を立ち上げ、協力体制を築き上げてきた。一緒に取り組むという基盤を受け継ぎ、全国に視察に出掛けた上で、具体的な青写真として碧南市健康ネットワークプランを描き出し、さらに、その実現の第一歩という位置づけで、医師会全体でORCAを導入したのである。

ゆっくりと、しかし確実に導入

 碧南市休日診療所は、82年に公設民営で開設された。碧南市が場所と補助金を提供し、医師2人、薬剤師・事務・看護師各1人を雇用している。もともとは手書きでのレセプト請求を行っていたが、昨年5月、休日診療所委員会がレセコンの導入を決めた。
「診療報酬の請求でもIT化が進んできました。そこで、05年頃にはオンライン請求になっていくのではないか、と考えて碧南市と相談しました。また、紙と電子という異なる媒体で保存する、つまり、バックアップという意味でも、レセコン導入を決めたのです」(碧南市医師会事務局長・角谷一利氏)
 当初は、休日診療所委員会では既存メーカ製のレセコンを導入する予定だった。そこで、碧南市医師会理事・医療情報システム委員会委員長である平岩堅太郎氏がORCA導入を提案した。碧南市休日診療所が公的な診療所であること、経費を抑えることができることにくわえ、碧南市健康ネットワークが動き出せば発展性をもつこと、これらがORCA導入の提案理由だった。
「単なるレセコンの時代はもう終わりです。もう少し先を見て、ネットワークシステムとつなぐことを考えました。小児科医が、日常の診療で既往歴や症状、診療データをいれておけば、他の医師が休日診療所でもそれを閲覧することができる。医師会の検査センターで得られたデータもコンピュータを介して見ることができれば非常にいいのではないか、ということなのです」(平岩氏)
 碧南市休日診療所の患者は8割以上が小児だ。しかし、碧南市内の小児科医は現在3人である。碧南市休日診療所では、2人の医師が診療にあたる体制だが、内科医が担当することが多く、常に小児科医が診察にあたるわけではない。もし、碧南市健康ネットワークが稼働すれば、ORCAを基盤としてそのシステムを活用し、小児科医の入力した診療データを閲覧することができる。つまり、来院の多くを占める小児患者を、複数の医師で囲むという形なのである。担当医は、オンラインでいつでも小児科医に相談することができるため、ネットワークにつながっているという安心感が得られる。さらに、医師が安心して診察を行うことは、もちろん患者の安心にもつながっていくのだ。こうして、ORCA導入が決まった。昨年の5月には潟Iーテックスに依頼して、6月からの3ヵ月間をスタッフの研修を中心とした導入期間に充てるよう、予算を組んだ。
 碧南市内で初めてのORCA導入であった碧南市休日診療所には、各医療機関から週替わりでやってくる事務スタッフが8人いて、その1人ひとりが常勤する医療機関のレセコンとは違うものを使うということになった。したがって、ORCAにはそれぞれ、1〜1・5ヵ月に1度触れるだけという状況であり、研修内容を重複させながらゆっくりと導入していったのである。事務スタッフは年齢が若いということもあり、積極的だったという。その後も、診療が休日になるため、8時から21時までは緊急コールセンターを設けて対応することにしていたが、10月からORCAの実運用を始めて以来、連絡はほとんどない。
 先導的な試行という意味合いもあった。入力するのは結局事務スタッフで、事務スタッフが慣れることもORCAの普及のきっかけになり得る。ORCAの実運用後は、レセプト請求の際に返戻されることもほぼなくなった。
「実は、私が一度見てみたかった、というのもありました」(平岩氏)
こうして、平岩氏のように、デモンストレーションではなく「ほんとうに動いているORCAが見たい」という人にとって、医師会診療所への導入は、まさに現実的な展示場ともなるのである。


左から、碧南市休日診療所のORCA導入に尽力した平岩堅太郎氏、碧南市医師会会長の奥田雪雄氏、碧南市医師会事務局長の角谷一利氏。

焦らずに、適切な浸透を

 碧南市休日診療所でORCAが実運用を始め、ORCAは無視できない存在になった。ORCAを実際には見たことがない医師にもその存在自体は認知されている。焦らなければ、ORCAに関する情報が正しく届いていく地域なのである。ただし、より詳しく知られるための努力はこれからだ。
「たしかに、熟年層には興味が持たれにくく、何らかの誘導が必要です。ただ、若手の医師にはORCAのもつ将来性を訴え、今後の実働に結びつけていけるでしょう。」(奥田氏)
 平岩医院では、将来の電子カルテ導入とあわせ、少し先のORCA導入の検討を始めている。早くから、画像ファイリングには熱心に取り組んできた。99年からの3年間は、手動で行っていたが、02年8月からはサーバー&クライアント型のファイリングソフトを導入し、自動的な画像ファイリングが可能になっている。検査センターのデータはまだ入れていないが、検査データが取り込めれば、電子カルテのようなIT診療支援環境に近づいていく。
レセコンの買い換え時など、ORCAはすでに選択肢の中に入っている。
今までは、それまで使っていたメーカのものを使い続けるのが常ではあったが、使いやすく発展性があるという手応えを感じられれば、そのうちORCAに乗り換えるだろう。医師会では01年7月にIT講習会を実施した。このたびORCAが稼働し、これからもネットワークプランにそって様々なシステムが動き出す。そうなるとIT講習会も再整備する必要がある。将来的なIT化の必要性は、誰もが漠然と感じているのだ。
 碧南市医師会では、とりたてて情報化に積極的だったわけではなかった。このままでは時代の潮流についていけずに取り返しがつかなくなってしまう、と岐阜市や加古川市などの先進的な事例に触れることを、先人たちから助言されていた。危機感をもって、視察に出掛けたのである。
「遅れてしまえば、もう取り返せない。耳学問でもいいから、最先端の実態に触れるという視点は非常に重要です。さらに、世間より遅れていることに気づけないと、業者のいいなりになることにもなります」(平岩氏)
 いいなりになるのではなく、多くを知り、いろいろなところで協力しあっていく。現に、独自レセコンの開発・販売・サポートという経験を財産としてサポートにあたる潟Iーテックスとは、協力体制にある。さらに、「市民のため」という認識をもつ行政を巻き込み、費用負担を頼んでいる。
 碧南市医師会は、加入率100%でも会員数54人とその規模はあまり大きくない。だからこそ、導入率を上げやすい規模でのORCA始動は、大きな変容へのきっかけになっていくだろう。
文・仁科典子

ORCA:日医標準レセプトソフトを中心としたプロジェクトの名称です。
詳細はホームページ http://www.orca.med.or.jp/ をご覧ください。